愛毒が溶けたら
「畑の事件は、どうなってるんだ」
「あぁ、この前の大学生ですか」

「!」


畑、大学生――それだけの言葉で「あの日」の記憶が、ジワジワ蘇ってくる。

耳に蓋をすればよかったのに……立ってるのがやっとで、そこまで気が回らなかった。


「”不同意わいせつ罪”で逮捕。とは言うがな」

「マエ*は無いし反省の色も大いにある。付き合っていた間柄ということもあり、検察官は問題なしと判断したようです」

「ふん、腑に落ちねぇな。
警察と検察が最大限に取り調べを行っても、引っ張れるのは三日が限度。後は釈放かよ」

「検察官の判断に任せるしかないですからね、悔しいですが。マル被の保護者にも連絡済みなので、処理済み案件に切り替わっています」


「……っ」


聞いてはいけない言葉を聞いた。
しかも、一番聞きたくなかった言葉だ。


(マエ…前科)
< 100 / 398 >

この作品をシェア

pagetop