愛毒が溶けたら
「……柴さん。これから引継ぎですよね」


私の背中に、そっと手を乗せる守人さん。

そんな彼を見て、柴さんは「ご心配なく」と、交番から顔を出した。


「私がやっておきます。先に上がりなさい――と、言いたいですが、公序良俗違反という言葉がありましてね」

「……知ってますよ。奥の部屋で冬音ちゃんを休ませるから、柴さんは引継ぎをお願いします、と言いたかったんです」

「それは失礼しました、ははは」


二人のやり取りに、少しだけ救われる。私のせいで、この場の雰囲気が重くなるのは嫌だったから……って、空気を重くしてる張本人だけど……。


「冬音ちゃん、歩ける? 少し話したいことがあって……聞きたくないとは思うんだけど」

「……っ」


聞きたくない。聞きたくないよ……。

だけど、中途半端に知ってしまった私が悪いから……。
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