愛毒が溶けたら
「聞き、ます……。お願いします……っ」

「……うん」


守人さんは私を立たせた後、先導して奥の部屋へ行く。

後ろでは、柴さんが「さっきの態度は軽率でしたね」と、声のトーンを低くして、交代に来たお巡りさん達に注意をしていた。

勝手に聞いてしまった私が悪いのに……と思っていると、なんと守人さんも「ごめんね」と私に謝る。


「冬音ちゃんを傷つけた。謝っても、謝り切れない」

「いえ……そんな、」


その時。

守人さんが、私へと振り返る。

「許しちゃダメ」と。そう言いながら。


「そんな簡単に許しちゃダメ。君は、優し過ぎるよ」

「え……」

「その優しさに漬け込む悪い奴が、この世にはウヨウヨいるからね。嫌な事をされたら、自分が納得できるまで、絶対に許しちゃダメだよ?」


もしかして守人さん、成希の事を言ってる?
成希に負けるなって、そう言ってくれてる?
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