愛毒が溶けたら
「強くなれって……そういう事ですか?」


すると、守人さんは「え」と目を開いた。次に「そうじゃなくてね」と。顔の力を緩めた後、壁に背を預ける。

そして片手で帽子をクイッと下げながら、柔らかい笑みで私を見た。


「もしも冬音ちゃんがピンチになった時、すぐに僕たちを呼んでって事」

「え?」

「冬音ちゃんが言ってくれたんじゃない。ホラ、僕たちって――

”カッコイイお巡りさん”なんでしょ? 

だから、頼りすぎるくらい頼ってよ」

「あ――」


それは、あの時の言葉だった。


――なんたって”カッコいいお巡りさん”ですから


私が「カッコイイ」って言った後。守人さんは照れくさそうに、そう返してくれた。

ちょっと前の事だったのに、まだ覚えてくれてるんだ。嬉しい。

そして守人さんの照れくさそうな顔は、あの日と一緒で……やっぱり可愛かった。
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