愛毒が溶けたら
畳の部屋に通され、私は正座をして聞いていた。時たま襲って来る恐怖に、震えることもあった。

だけど、その時は……


「大丈夫だよ、冬音ちゃん」


守人さんが声を掛けてくれた。

「ここにいるよ、一人じゃない。ちゃんと守るよ」って、守人さんの全身が、そう言っている気がして……私は、最後まで話を聞く事が出来た。


そして、全てを話してくれた時。

「これは余計なお世話ですが」と、珍しく、柴さんが言いにくそうに話す。


「親御さんが今回、冬音さんに”釈放”の事を言わなかったのは……せっかく前を向きかけている冬音さんの笑顔を、再び曇らせたくなかったんだと思います。

その努力も、私たちのせいで水の泡になってしまいましたが……」

「はい、両親の気持ちは……分かっているつもりです」


今朝、お母さんが怖い顔で「行っちゃダメ」と言った理由が分かった。お巡りさんから「釈放」の話を聞いてたからだ。
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