愛毒が溶けたら
「あ、勇運くん……」


色々あったから、ちょっと忘れていた。

そもそも、散歩をしようと思ったきっかけが、勇運くんの事でモヤモヤしたからって言う理由だったのに。


私には分からない、勇運くんの事。

じゃあ守人さんは?

勇運くんのお兄さんなら、勇運くんの事を何か知っているかもしれない。


彼が持っている、悩みを――


「あの、卑怯かもしれないんですけど……聞いてもいいですか?」


それこそ卑怯な言い方をした私に、守人さんは笑って頷いた。


「僕が答えられそうな質問なら、何でもどうぞ」


フッと笑った時、白い吐息がふわりと浮かぶ。それは上空でしばらく漂った後、跡形もなくサラリと消えた。
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