お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「……」
「……」
教室の中には、勇運くんと私。お互い三秒見つめた後、気まずくてフイと視線を逸らした。
かと思えば、勇運くんはカバンに手を掛ける。どうやら、帰るらしい。
そ、それはダメ! せっかく莉音ちゃんが作ってくれたチャンスが、無駄になっちゃう!
「ゆ、勇運くん……!」
思い切って、声をかける。迷惑だって分かってるけど、でも……あの日、一緒に交番に来てくれた事は、どうしてもお礼が言いたいから。
「……なんだよ」
「えと、あの……この前、一緒に交番に行ってくれて、本当にありがとう」
「別に。俺も用があっただけだし」
私と目を合わせるも、それは一瞬のこと。勇運くんは、すぐに視線を自身のカバンへと移した。