お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「じゃ、俺は帰るから」
「あ、ちょ……待って!」
私と勇運くんの距離、それは机三個分。近いような、遠いような。
そんなあやふやな距離感が嫌で……私は、スッと足を一歩踏み出す。
すると――
「来るな」
「……え」
勇運くんからの冷たい一言が、私の足を凍らせる。ピクリとも動かなくなった私に、まるでとどめの釘をさすように――勇運くんは、冷たい目で、冷たい声で、こう言った。
「もう三石とは関わらない」
「それ、どういう……」
「だからお前も、話し掛けるな」
「まって、勇運くん!」
緊張して、少し怖くて。動かなくなった足の代わりに、必死に手を伸ばす。そんな私を見て、勇運くんは距離を縮める。
そして、私が伸ばした手に自分の手を伸ばして――指先同士がそっと触れた。