お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「ゆ、勇運くん……?」
「……」
手が触れた、かと思えば。少しずつ重みを加えていき、私の手を強制的に下げる。
そして私の指先が床に向いた瞬間――
勇運くんは、素早く私から手を離した。その時の瞳は鋭いけど……なんだか切なそうだった。
「――この手は、違うだろ」
「ちがうって、どういう事? 教えてよ、勇運くん」
「……」
勇運くんは、下唇をキュッと噛む。そして、何かを言いたそうに開いた口は……結局、何も言わずに静かに閉じた。
そのまま私に背中を向け、顔を見ないまま――「俺じゃなくて」と、小さな声で呟く。
「三石には、こんな”小さい”俺じゃなくて、いつもニコニコしてる兄貴がいるだろ。あんな兄貴だけど、警察だ。困った事があったら、そっちに手を伸ばせ。兄貴を頼れよ」
「勇運くん……」