お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「うぅ……」


呻く成希を見て、今がチャンスだと。起き上がるため、腕に力を入れる。

だけど恐怖に支配された体は、全く言うことを効かない。「うぅっ」と力む声が、虚しく響くだけ。


だけど、その時。
私の体が、ふわりと宙に浮かぶ。


「へ――、っ!」


目の前の人物を見て、驚き過ぎた私は……声を出す事をスッカリ忘れていた。

なぜなら、私の目に写る人物。
その人は――


「悪い、待たせた」

「ゆ、勇運くん……っ」


ぶっきらぼうに見えるけど優しくて、どこかいつも冷静に見える勇運くんが――

はぁ、はぁと浅い呼吸を繰り返し、
冬だというのに顔から汗を流し、
切羽詰まった目で私を見つめていた。
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