愛毒が溶けたら
うん。そうだよ
私と成希は付き合ってる
彼氏彼女だよ、間違いない


そう言わないといけないって、思っているのに。

これを言わないと、後でとんでもない目に遭うって分かっているのに。



「……ッ」



言葉が、一文字も出なかった。



「おい、冬音……。何黙ってんだよ! 俺らは付き合ってる、そうだろ!?」

「まーまー、お兄さん。なんか彼女さんビックリしてるみたいだし、ちょっと落ち着こうよ~」

「俺は落ち着いてる!!」



全く落ち着いていない成希を見かねたお巡りさんは、無線に手を当てた。



「こちら〇〇区。暴れている男一人、応援求む」

『了解』



無線から、聞きにくい掠れた音で返事が来た途端。

近くからパトカーのサイレンが聞こえる。

これには、お巡りさんも「おッ」と嬉しそうに笑った。
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