お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「なぁ……その友達って、男?」

「そうだよ」

「――っ!」


瞬間、この場に一気に冬が来たように。温度が氷点下を下回り、体の芯から凍った。


追ってこない三石
車に乗った男の友人
弟だけを走らせたワケ


俺の「まさか」は、ほぼ真実だと。頭を鈍器で殴られた衝撃と共に、思い知る。


「三石……!」


頭の奥で、三石の泣く声が聞こえる。あの”クソやろう”に、また泣かされてるのか。


「……っ」

「にーちゃん、大丈夫? なんか震えてるよ?」

「うる、さい……っ」


俺はスマホを操作して、兄貴が駐在している交番に電話をする。


弟の存在を視野に入れないように。
「過去のこと」は考えないように。

今は……アイツの事に集中する。
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