愛毒が溶けたら
俺の腕の中で眠る、三石を見る。廃墟を出ても、俺は三石を離さず抱き上げたままだった。念のため病院へ行くとの事で、そろそろ救急車が到着する。それまでは側にいたいと、俺が申し出て、この状態のままだ。


「……」


疲れ切った表情の三石。まつげには、涙が少し残っている。


「最低かよ、俺……」


今日の放課後。教室で三石を避けなければ。三石の話を素直に聞いて、そして一緒に帰っていれば。三石は、こんな目に遭わなかった。

ごめんな三石。
俺は、お前を守りたいって思ってるのに。
自分よがりな行動をとって、結果お前を傷つけた。

俺のせいで――


「勇運、ちょっと休みなよ」

「……いい」


忙しい中、兄貴が俺に話し掛ける。俺の様子を伺いながら、三石の調子を心配しながら。
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