愛毒が溶けたら
だけど、表情が変わらないのが、成希と話していたお巡りさんだ。

ニコニコの笑みを浮かべたまま、成希の肩を叩く。


ポンッ



「顔パスかぁ、結構けっこう。
でも、それはさぁ――

自分の犯した罪を、ちゃあんと償ってからにしようね?」



その後――


「連行」とお巡りさんが言った事により、成希は連れて行かれる。



「待てよ……おい、冬音!!」



成希は姿が見えなくなるまで、何度も私の名前を呼んだ。

だけど、私は一度も答えなかった。

耳にフタをして、成希の声をシャットアウトし続ける。


すると、しばらくして。


私の震える手に、温かい温度が加わる。



「や、やめて……っ!」



いきなりの人肌に驚き、つい手を払いのけてしまう。

目を開けられなくてギュッと瞑った。


もう何もかもが嫌だ。ここから逃げ出したい。路地裏の暗闇に混じって、私の存在なんて消えてしまえばいいのにって――


そんな事さえ思った。


だけど、その時。
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