愛毒が溶けたら
「勇運くん、冬音を守ってくれてありがとう」

「え……」

「本当に、ありがとう」

「――っ」


おじさんを見ると、その目には、優しさだとか元カレへの憎しみだとか、三石が無事で安心だとか――複雑な色が、浮かんでいた。

その中で、俺に向けられたのは――


「勇運くんが冬音を助けてくれなかったら、どうなっていたか分からない。ここに来る途中で、警察の方から全ての事を聞いているよ。

よく電話に出てくれた。よくメールに気付いてくれた。

君がいなければ、冬音は……今、こんな安心した顔で眠ってないだろうね」

「……」


今にも泣きそうなおじさんの笑顔を見ていると、さっきの三石を思い出す。


――勇運くんと、話したかった

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