お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
過去と向き合い、
キキィィィー、ドン
その音が始まり、そして終わりを迎えた頃。
一つの儚い命が、静かに散った。
「車が電柱に突っ込んだぞ!」
「救急車!!」
言葉にすれば十文字にも満たない。
だけど、その十文字にも満たない間で、
親父は、この世からいなくなってしまったんだ。
「勇運、おいで」
「もう”おいで”なんて言われる年じゃねーよ。中学生だぞ」
「はは、そうだけどね。親の目にはね、ふとした瞬間に、子供が小さな頃の姿で見える事があるんだよ」
「……なんだそれ」
親父は優しかった。
おっとりしていて、母親に怒られた俺たち兄弟を慰めるのは、いつも親父の役割だった。