お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


「母さん、知ってたみたいだね」

「え……」

「あの子を助けようとして、父さんが事故した事」

「……助ける?」



ポツリと、兄貴が言った。

その無表情から、兄貴が今、何を考えているか分からなかった。そして、それ以上なにも喋りそうになかったから、俺は素直に自分の疑問をぶつけた。



「親父は、あの子を避けようとして……電柱に突っ込んだのか?」

「うん、そうだね」

「……」



何を言えばいいか分からなかった。どっちかが死ななければ、どっちかが助からなかった状況で……。そして、その両人が揃ったこの場で、俺は「良い」も「悪い」も言う事が出来ないまま。


「……っ」


ギュッと、拳を強く握った。それしか出来なかった。

声にも出せず、批判も出来ず。行き場を失った感情は涙へと変わり、目に溜まっていく。その時、兄貴が口を開いた。
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