お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


『あ、またいる』


放課後、帰り道で三石を見かけたのは、梅雨の時期だった。

クラスであまり喋らない子が、最近は輪をかけて無口になった。心なしか表情も暗く見えて、三石の周りには、常に負のオーラが漂っていた。そのせいか、学校での三石の存在感は、限りなく薄かった。


そんな三石を、学校の帰り道で見かけた。

自動販売機の横で、無表情で佇む姿。初めは「何をしてるんだろう」と不思議だったが、暫くして現れた男を見て、彼氏と待ち合わせしていたのだと分かった。



『行くか』
『あ……、うん』



だけど、その時の三石は……なんというか、変だったんだ。


彼氏に会ったら嬉しいはずなのに、彼氏の姿を見た途端、三石の顔は強張り……浮かべる笑顔は、ぎこちなかった。「会えて嬉しそう」な表情には、とても見えなくて。


それが不可解で、気になって。その日から、三石の顔をよく見るようになった。
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