愛毒が溶けたら
「もういいか?」

「……へ?」



ガタリと椅子を立ち、私を見降ろす勇運くん。

かと思えば、背中を丸めて、顔を私に近づけた。どんどん、どんどん。


最初は前髪同士が当たって、しまいには、まつ毛同士まで当たって。

そんな近さまで勇運くんはかがんで、端正な顔を惜しみなく私に向ける。



「ゆ、う、くん……。何、してるの?」

「なにって」



私が喋って。勇運くんが喋る。

もしも同時に喋ったら、お互いの唇さえも当たりそうで。そんな事ばかり意識しちゃって、私は小さな隙間からしか、声を出すことが出来ない。


だけど、そんな事を気にもしてない勇運くんは――



「”たまたま”ってことで。このまま口、当たんないかな」

「ッ!」


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