お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「顔も似ていたらしいんだけどね。それよりも表情なんだって。なんていうか、」


悔しそうで、怒りも含んでいて。それでいて、悲しい表情。


「あぁいうのを”複雑な表情”って言うんだなって、お父さんがしみじみ言ったものだから、私も記憶に残っててね」

「それって、まさか……」


その時、互いの連絡先が、互いのスマホにピコンと入る。


「交換してくれてありがとう」と笑うお母さん。だけど勇運くんは……口を硬く閉ざして、何やら考えていた。



「どうしたの、勇運くん?」

「いえ、何でもありません。……家族水入らずなようですし、俺はここで失礼します」



ガラッ

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