愛毒が溶けたら

そう。ただでさえイケメンで人気者の勇運くんが、ここ最近は常に私のそばにいるから、クラスの人はおろか、学校全体がざわつき……



「ねぇ、ついに勇運くんに彼女が出来たって知ってる?」

「どの子? 私、勇運くんの母親ですって挨拶してくる」

「怖い怖い、せめて姉ですって言って家系に潜り込もう」



とか何とか。数多の女子が、混乱の嵐に巻き込まれていた。

飛び交う噂に、さすがの私も「ヤバい」と思い、片っ端から訂正をいれるのだけど……


「でも勇運くん本人が、冬音ちゃんの事を好きって言ってるよ?」


なんて。ありえない回答が来たりする。



「聞くんだけどさ……勇運くんって、私の事を、その……」

「好きって?」



顔をこっちに向け、私を見降ろす背の高い勇運くん。

それだけの事なのに、まつ毛の影が目にかかり、そこはかとなく漂う哀愁――そんな「なんとも言えないカッコよさ」が、爆発的ににじみ出ていた。
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