愛毒が溶けたら
勇運くんは、いつもそうだ。


強引に見せかけて、全くそうじゃない。ばかりか、私を最大限に配慮し、包み込んでくれる。その優しさに、もう何度助けられたか。



「どうした、冬音」

「勇運くん……ありがとう」

「……」



不思議そうな顔で私を見る勇運くんは「それってさ」と、足を一歩踏み出した。私の方へと。



「今ここでキスしてもいいって事?」

「え! ち、ちがっ」



誤解させるような事をいってごめん、と謝る中。

突如、聞こえたのは第三者の声。


それは――



「なにしてんの。ねーちゃん、にーちゃん」

「な……夏海?」



玄関にいる私の姿を確認してくれた先生が、夏海の帰り支度を終え、私たちの元へ連れてきてくれていた。

夏海はポカンとしていて、付き添いの先生は「ふふ」と満面の笑みを浮かべている。

これは絶対、聞かれたよね……!?
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