お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「す、すみません! 夏海を連れてきてくれてありがとうございます……! ほら夏海、さようならを言おうね!」

「せんせー、さようなら!」

「はーい、さようなら~♪」



穴があったら入りたいくらい恥ずかしくて、夏海を連れて小走りで移動する。

そんな私たちを追いかけようとした勇運くんの耳に、先生の独り言が届いた。



「なんだか若いお父さんとお母さんみたいね、いいわねぇ」

「……」



聞こえなかったフリをしようかと思った勇運くんだけど、思わぬ言葉についつい嬉しくなったようで……



「将来、そうなればいいな」



なんて。思わず、呟いてしまう。

幸せそうに笑うイケメンの呟きは、バッチリ先生に聞こえたらしい。その後、「夏海くんのお迎えでーす」の声で、多くの先生が勇運くんを見ようと、窓へ目をやる姿が目撃されたのだった。

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