お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する






ガチャ


「たっだいまー!」

「夏海、手を洗ってねー」



羞恥心を少しずつ帰路に置いてきた私は、家に着くころには平常心に戻れていた。

といっても……



「お邪魔します」



家庭教師をお願いした勇運くんも一緒に家の中に入るのだから、静かになりつつあった心臓の音は、クレッシェンドのように再び強く鳴り始める。



「俺も手を洗う。夏海について行けばいい?」

「は、はい……っ」



勇運くん、夏海の事を名前で呼んでくれてるんだ。昨日よりも、更に歩み寄ろうとしてくれてるんだね。



「でも、勇運くん……また無理してないかな?」



病室では無理がたたって、石化してしまった勇運くんだ。今だって、相当無理してるんじゃ――!?
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