お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「一葉なら、所用でいませんよ。すぐ帰ってきますが」
「いいんだ、俺は柴さんに話があるから」
「……私に?」
メガネをキラッと光らせて、興味津々で食いつく柴さん。
「まさか例のサインがやはり欲しくなったとか?」と、ペンを回して素早くスタンバイした。
だけど、勇運くんは首を振る。
首を振る……だけで、いつもの「ちがうっての」などという彼特有のツッコミがないところを見れば、どうやら話は深刻かもしれない――
そう思った柴さんは、すぐに真面目モードに切り替える。
「冬音さんの事ですか?」
「いや。さっき病院に行ったけど、元気そうだった」
「……そうですか」
内心、「お見舞いにいくほどの仲だったのか」と思わないでもなかったけど、柴さんはあえて口にせず、勇運くんが話すのを待つ。
そして、次に彼の口から出て来た言葉とは――