お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


――つーかまえた~



あの日、成希に廃墟に連れて行かれ、逃げる私。成希は気味悪い笑みを浮かべながら、私に近寄り、そして「捕まえた」と。そう言ったんだ。



「ぁ、あ……っ」



そう言えば、この暗闇も廃墟を思い出す。あの廃墟の記憶は、無意識のうちに思い出さないよう蓋をしていたから……。今、その蓋が一気に外されたみたいで……っ。


グラリ、と。


視界が回る。立っていられないほどのめまいを覚え、これから自分が意識を失うかもしれない、と。そんな不安に駆られた。

そして混乱した頭の中では、今、この場に成希がいるような気がして。尚も、私を追いかけているような気がして。


そんな中で気を失ったら、成希に何をされるか分からない――


警鐘を鳴らした本能が、ガツンと、私の頭を内側から殴る。
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