お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

すると、反応したのは私の口。訳が分からない中、とっさにこう叫んでいた。



「――……勇運くんっ!!」



勇運くん、勇運くん。

あの日、あの時。私を助けてくれた勇運くんの姿を思い出して。いつも私が辛いときに、そばにいてくれた勇運くんを思い出して。

まるですがるように、掠れた声で名前を呼んだ。



「勇運くん……っ!」



すると、



パシッ



「ひ……っ!」

「落ち着いて、冬音ちゃん。僕だよ、守人」

「しゅ……」



守人さん……?

訳が分からず、泣く事しかできない私を見て。守人さんは、お化け役のスタッフさんに「すみません、非常口は」と話をしていた。
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