お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「からか……え?」

「だって冬音ちゃんは、勇運が好きでしょ?」

「勇運くん……?」



寝耳に水のことで。自分の事なのに、全く分からなくて。

「そうなんですか?」と。自分のことなのに、思わず聞き返してしまった。



「自分が無意識の中で、一番に名前を口にする人。それが”好きな人”なんだと、僕はそう思ってる」

「それって……」



さっきのお化け屋敷のことを言ってるんだと、容易に分かった。

やっぱり守人さん、さっきの事を、そんな風に勘違いしてたんだ……。



「私は、勇運くんを……」

「うん。きっと好きだよ。この前も、勇運が冬音ちゃんの家にいたでしょ?」

「あ、あれは、」

「だから、そういうことなんだよ。――あ、着いたよ。降りようか」

「っ、」



なんだろう。二人で話しているのに、全くかみ合ってない。話が、出来ていない気がする。
< 302 / 398 >

この作品をシェア

pagetop