お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


「じゃあ、またね。冬音ちゃん」

「……はい。今日は、ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとう」

「……」



守人さんは宣言通り。私を、家まで送り届けた。

笑う守人さんと、何も言えず、足も動かず。ただ黙っているだけの私。


すると、玄関のドアがガチャリと音を立てる。

出てきたのは……



「あ、冬音。良かった、帰ったんだな」

「え、勇運くん……?」

「って、兄貴も一緒かよ」



玄関から出てきたのは、なんと勇運くん。

聞けば、私に合いそうな参考書を見つけたので、わざわざ家まで届けに来てくれたらしい。



「学校で渡してくれても、良かったんだよ?」

「お前なぁ……」



だって持ってきてもらうのも悪いし――と言いかけたところで。

守人さんが「冬音ちゃん」と、私の名前を呼んだ。
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