お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


「勇運の、冬音ちゃんに会いたい気持ちも汲んでやって」

「え……」

「な、兄貴……余計なこと言うなよ」



睨む勇運くんと、ニコニコ笑う守人さん。

いつもの兄弟ケンカに見えるけど……だけど、私の目には、ひどく霞んで見えて。強く胸が痛んだ。



「……っ」

「……っと。じゃあ僕は帰るね。あとは若い者同士で、ね?」

「若い者同士って……、じじくさ」



ため息一つで、守人さんの言葉を一蹴した勇運くん。そんな強気な態度の彼に、守人さんは「ふふ」と笑った。

そして――



「ばいばい」



いつものようにニコリと笑みを浮かべた後は、きびすを返して行ってしまう。

いつまでも、その後ろ姿から目を離せない私とは反対に。守人さんは、一度も振り返ることなく、私の前から姿を消したのだった。
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