お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

あと一週間くらいで、クリスマスが来る。ふられたばかりだから、完全にノーマークだったよ……。

そういえば、ケーキののぼり(宣伝旗)を、あちらこちらで見る気が……。町が妙に色めきだってるのも、クリスマスが近いからか。



「いいなぁ……クリスマス」



ポツリと、そう言った時。

バイクを停めた守人さんが「空いてるの?」と、私の顔を覗いた。



「わ、び……ビックリしました……」

「ふふ、ごめんね。それで、空いてるの? クリスマス」

「空いてるっていうか……」



私、そもそも受験生です――と答えると。守人さんは「あ」と、短い声を出した。



「ごめん、そうだよね。家にいる勇運が全く勉強しないから、ついつい受験生って事を忘れちゃうよ」

「え……」



勇運くん、全国模試で一位をとるくらいなのに、家で勉強しないの? じゃあ何であんなに頭がいいの⁉

「ずるいー!」と顔を歪めた私を見て、守人さんがクスクス笑う。
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