愛毒が溶けたら


「ま……、まさか……っ!」



あの看板の下敷きに――?


そう思った瞬間、足に力が入らなくて、ガクリと地面に膝をつく。全身がブルブルと震えて、全くいうことを聞かない。



「ど、どうしよ……、どう、したら……っ」



混乱で、パニックになって。

わけがわからなくなってきて、うつろになってきた目に、ある色が飛び込んで来る。


それは、交番の赤いランプ。



「そうだ、ここ……交番っ!!」



看板が落ちてくる前、守人さんと柴さんが交番の中にいた。その交番は、すぐ目の前だ。



「しゅ、守人さん、柴さん……っ!!」



震える声じゃ、大きな声なんて出なくて。喉が痙攣するような震えを覚えながら、必死で声を紡ぐ。

だけど――二人の声は聞こえない。


なんで、どうして……と思っていると。


もっと絶望的な状況が、目の前に飛び込んで来た。
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