愛毒が溶けたら


「しゅ、守人さん!!」

「冬音ちゃん!」



私の声に気付いた守人さんが、急いで駆け寄った。その間、柴さんは無線を使って、応援を頼んでいる。



「どこかケガはない⁉」

「わ、私たちは、無事です……。守人さんも、よく無事で……」

「交番の中で運よく隙間が出来てね、助かったよ」



ふっと笑った守人さん。だけど――

私の一言で、その顔が凍り付く。



「ゆ、勇運くんが! 勇運くんがいないんです……っ!」

「え」

「看板の下に……。夏海のお友達も……っ!」

「⁉」



その時の守人さんの表情は、目から、唇から、顔から――全てのパーツから、色という色がなくなっていた。

あとに残ったのは、絶望のみ。守人さんは私と同じく、地面に張り付き動けなくなっていた。



「勇運……」

「守人さん……勇運くんを、助けて……。助けてください!」

「っ!」



私の声を聞いた守人さん。

その時の顔は、なぜだか泣きそうで――守人さん自身も「勇運を助けて」と、誰かにお願いしているような。そんな表情をしていた。

これから看板に近寄り、がれきの中をかき分けるなんて。今の守人さんに、それらが出来そうな雰囲気はない。
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