お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
素直になれ*勇運*
*勇運*
ぐらりと、空で何かが動いたのが見えた。
だから、すぐに冬音を突き飛ばした。俺と繋いでいた夏海の友達は、とっさに俺が抱きしめて……あれ?
それから俺、どうしたんだっけ――
「ん……い、て……」
しばらくの間、どうやら気を失っていたらしい。
激しい衝撃音が、まだ耳の中でこだましている中。俺はゆっくりと目を開けた。
すると、目の前にあったのは……大きな物体。これ、なんだ? 金属の板か?
その金属の板が、頭の上から地面に至るまで、びっちりと俺の行く手を塞いでいる。どうやら、閉じ込められたらしい。
「はぁ……何だってんだよ、全く……」
ため息をついた時、腕にズキンと痛みが走る。
見ると、何かでひっかいたような長い傷が出来ていた。血が出ている。結構な量……ではないと信じたい。