お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「ふぅ……」
腕から視線をずらす。すると、夏海の友達が俺の腕の中にいた。
間一髪、俺が抱き留めたからケガはなさそうだが……起きない。
いくら肩や頬を叩こうが、「おい」と呼びかけても起きない。もしかして、俺から見えない所でケガしてるのか? 頭を打ったとか?
「くそ、やばいな……」
幸運なのは、板に潰されなかった事だ。
後ろにある建物に板が引っかかっているおかげで、なんとか板がずり落ちずに済んでいる。
だけど……
運よく引っかかっているだけで、そのひっかかりがとれたら、真上からズドンだ。今度こそ潰される。
その前に、早く抜け出さないと――
そう思っていた時だった。
「う、ゆ……ゆう、勇運!!」
「え、兄貴……?」
どこから聞こえる、兄貴の声。
顔を動かせる範囲は限られているが、可能な限り声の元を探す。
すると、なぜか顔から血を流している兄貴が、俺の真横から顔を覗かせた。