お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「ずっとニコニコして、とっくに親父の死を乗り越えたような顔しやがって。
本当は、乗り越えてないんだろ。まだ、腑に落ちないんだろ」
だから兄貴、素直になれよ。
「俺と一緒で、ずっと子供が嫌いだったんだろ? 親父が死ぬ原因になった子供が、ずっと許せないんだよな」
「……」
兄貴は、今度こそ。動かす手を、ピタリと止めた。
次にギュッと。地面に転がる石ころを握り、力を込める。
そして、周りが警笛や警察の声で慌ただしくなってきた時――風に乗せて「そうだよ」と。
少しずつ、兄貴は心情を吐露し始める。
「嫌いだよ、子供なんて……。父さんを殺した存在を、どうして好きになれっていうの」
「……やっぱ、そうだったか」
それを長い間、よく隠せたものだと。俺は率直に、兄貴をスゴイと思った。
そこまで自分の感情を操作できるのは、並大抵の精神じゃ無理だからだ。