お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「ずっとニコニコして、とっくに親父の死を乗り越えたような顔しやがって。

本当は、乗り越えてないんだろ。まだ、腑に落ちないんだろ」


だから兄貴、素直になれよ。


「俺と一緒で、ずっと子供が嫌いだったんだろ? 親父が死ぬ原因になった子供が、ずっと許せないんだよな」

「……」



兄貴は、今度こそ。動かす手を、ピタリと止めた。

次にギュッと。地面に転がる石ころを握り、力を込める。


そして、周りが警笛や警察の声で慌ただしくなってきた時――風に乗せて「そうだよ」と。

少しずつ、兄貴は心情を吐露し始める。



「嫌いだよ、子供なんて……。父さんを殺した存在を、どうして好きになれっていうの」

「……やっぱ、そうだったか」



それを長い間、よく隠せたものだと。俺は率直に、兄貴をスゴイと思った。

そこまで自分の感情を操作できるのは、並大抵の精神じゃ無理だからだ。
< 334 / 398 >

この作品をシェア

pagetop