お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「あの時、兄貴はあぁ言ったけどさ」

「”あの時”?」



それは、兄貴と冬音が二人揃って帰ってきた時。

あの日から、二人に元気がないことに気付いていた。そして、その理由が「恋」じゃないかということも。



「何が”あとは若い者同士で”だよ。ウソつくな。兄貴だって、冬音を諦めたくないくせに」

「!」

「兄貴、もう自分の気持ちをなかったことにするのはやめろ。ため込むのも、秘密にするのもナシだ。

俺、昔に言ったよな?」



――俺……隠し事は嫌いだから



「良い事も悪い事も全部まかせあうのが家族なんだろ? じゃあ俺の言う事がどんなに”悪い事”でも、受け取れよ」



ズイッ


腕を最大限に伸ばして、兄貴へ子供を近づける。

兄貴が手を伸ばしさえすれば、子供を掴める距離だ。そしてこの隙間から、子供は出られるはず。


兄貴、その子は助かるんだよ――

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