お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「警察官なんだろ、前をみろ。兄貴の目に写ってるのは、正義じゃないのかよ。

助けられる命を助けない――そんな悪に、兄貴がなって、どうすんだよ。

警察官になった兄貴を、親父はきっと誇ってる。そんな親父に……恥をかかせんな!」

「っ!」



親父、ごめんな。

こんな時に親父の話を出すのは、我ながら卑怯だと思うよ。


だけど、言わせてくれ。兄貴が動くには、どうしたって親父の力が必要なんだ。

今こそ、家族みんなで力を合わせる時だろ?


だから親父、頼む。

今、兄貴が動けるよう、



力をかしてくれ――



「……っ」

「……それに、弟を信用しろ。兄貴が戻って来るまで、死にはしないって」



すると兄貴は、キッと俺を睨んだ。

だけど、いつぞやと同じく、



「その言葉、忘れないように」



そう言って、子供を隙間から引きずり出した。

そして――



「負傷者一名、確保!」



俺のそばから、離れて行った。

< 339 / 398 >

この作品をシェア

pagetop