お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「警察官なんだろ、前をみろ。兄貴の目に写ってるのは、正義じゃないのかよ。
助けられる命を助けない――そんな悪に、兄貴がなって、どうすんだよ。
警察官になった兄貴を、親父はきっと誇ってる。そんな親父に……恥をかかせんな!」
「っ!」
親父、ごめんな。
こんな時に親父の話を出すのは、我ながら卑怯だと思うよ。
だけど、言わせてくれ。兄貴が動くには、どうしたって親父の力が必要なんだ。
今こそ、家族みんなで力を合わせる時だろ?
だから親父、頼む。
今、兄貴が動けるよう、
力をかしてくれ――
「……っ」
「……それに、弟を信用しろ。兄貴が戻って来るまで、死にはしないって」
すると兄貴は、キッと俺を睨んだ。
だけど、いつぞやと同じく、
「その言葉、忘れないように」
そう言って、子供を隙間から引きずり出した。
そして――
「負傷者一名、確保!」
俺のそばから、離れて行った。