お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「良かった。何かあれば、いつでも声を掛けてね」

「…………」

「ん?」


お巡りさんは、何も喋らない私を見て、首を傾げた。

一方の私は――


「な、何もなくても……声をかけて、いいですか?」

「!」


頭を撫でてくれていた手は、とっくに離れている。

その手を目で追いながら……なぜか。こんな大胆な事を言ってしまった。


「え、っと」

「……あ。す、すみません! 何でもないです」


お礼を言いたいだけなので――と、苦し紛れの言い訳をする。

私、何言ってるんだろう……っ。
どうしちゃったの、私!


「おい、三石。そろそろ時間」

「あ……、ごめんね。行こっ」


男子に促され、スマホを見る。

しまった。始業のチャイムまで、あと五分しかない!


「そ、それでは……失礼しますッ」


ペコリとお辞儀をした後。最後に一目だけ、お巡りさんの顔を見る。

すると――
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