お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「ちょうどいい潮時、か」
最後に、冬音をこの手で守れたんだ。
隣にいたからこそ、お前を守ることが出来た。本望だよ。もう思い残すことは、何一つだってないくらいだ。
「あ、でも……最後に、」
ここ数日、冬音はずっと浮かない顔をしていた。
だから最後に、お前の笑った顔を見たかったなって。そんなどうしようもない心残りが、僅かな希望のすき間に生まれてしまう。
「冬音、笑えよ。いつだって、お前は自由なんだから」
そして兄貴。冬音がずっと笑っていられるように、今度は兄貴が冬音の隣で守るんだ。
俺は、兄貴に冬音を渡すまでの、繋ぎでしかない。
だけど、最高に幸せだったよ。だって俺がしたい事を一番にしてきたんだから、後悔はない。
「ありがとう、冬音」
呟いた、その時だった。
「、くん――――勇運くん!」
「!」
すぐそばで、冬音の声が聞こえる。
見ると、いつの間にか震えていた俺の手に、最大限に伸ばされた冬音の指が、そっと置かれていた。
*勇運*end