お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「だから、助けを待とう。今、みんなで勇運くんを助けてるからね」

「……ん」



その時。看板をどけるための重機が到着したのか、現場は一気に騒々しくなる。

だけど、同時に。

勇運くんからくぐもった声が聞こえたのを、私は聞き逃さなかった。



「冬音……、ありがとう……っ」



それは、いつも強気な勇運くんからは、想像もできないほどの弱った声で。



「勇運くん……」



暗いがれきの中に、体を丸くして小さくなっている勇運くん。

そんな彼を見て、私は、



――やめて、……成希!!



あの日、寒空の下。

暗い路地裏で、成希にされるがままとなっていた自分自身を、思わず重ねてしまう。
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