お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「……はい、行ってらっしゃい」


お巡りさんは帽子をキュッと下げ、顔を隠していた。

あぁ、これは……。

きっと私が変な事を言ったから、今度こそ引かれちゃったんだ――と落ち込んだ、その時だった。


私は、気づいてしまう。

お巡りさんの耳が、ほんのり赤く染まっている事に。


「耳……」

「! ほら、早く行きなさい。遅刻はダメだよ?」

「は、はいっ」


耳を指摘されたのが恥ずかしかったのか。お巡りさんは私を見た後、学校を指さす。

そして最後に――


「今度は、こけないようにね」


それだけ言って、敬礼のポーズをしてくれたのだった。


< 35 / 398 >

この作品をシェア

pagetop