愛毒が溶けたら

『お父さんだってね、危ないがれきの中に突っ込むほど、熱い男じゃなかった……っ。あんな危ないこと、もう二度としないでっ。

夏海も、冬音も……どっちもいなくなっちゃうんじゃないかって、もう……どれだけ怖かったと、思ってるの……っ』

『お、母さん……ごめん、ごめんなさいっ』



お母さんと一緒に、震える体を抱きしめあってワンワン泣いて。それを見た夏海が、わけもわからず一緒に泣いて。

三人で、無事を確かめ合いながら、目がパンパンに腫れるまで泣き続けた。


そんな団子状態で三人いたところに、走って帰って来たお父さんが、玄関に入るやいなや――ドサリとカバンを投げ、固まって座る私たちを丸ごと抱きしめた。
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