愛毒が溶けたら

ちょっと怖かったけど「出る」と、お父さんのスマホをかりる。お父さんは、また取りに来るよ、と言って部屋から退室した。



「も、もしもし……」



ドキドキしながら、スマホに耳を当てる。

すると、私のお母さんよりも少し声が高い女性――勇運くんと守人さんのお母さんが、私に挨拶をした。



『あなたが冬音さんね、初めまして』

「は、初めまして。あの、勇運くんは……っ」

『大丈夫。ちょっと出血量が多いから数日入院するけど、傷も縫い終わったし、もう大丈夫よ。心配しないでね』

「出血……入院、縫う……」



勇運くん、やっぱり大変なことになっていたんだ……。

それなのに、私は何も出来なくて、ただ、助けてもらうだけで。本当、情けない限りだ。



「お母さん、ごめんなさ、」



自分の不甲斐なさが申し訳なくて謝ろうとした、その時だった。
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