愛毒が溶けたら

ありがとう――と。

なんと、勇運くんのお母さんからお礼を言われた。



「え、どうして……私は、何も」

『お医者さんから言われたの。

”出血性ショックを起こしてもおかしくなかったのに、よく意識障害が起きなかった”って。”普通に話したり、意識を保ってられるのはスゴイ事”だって。

その時、守人から聞いたの。勇運が危なかった時、あなたはそばにいて、励まし続けてくれたんでしょう?』

「あ……、」



あの時。私は勇運くんを助けられなくて、傍にいる事しか出来なくて。

そして今、あの時に何も出来なかった自分に落ち込んでいた。

だけど、あの時の私の行動に……、意味はあったんだ。



勇運くんを救うことが、出来ていたんだ――


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