愛毒が溶けたら

「にーちゃん~! 俺とねーちゃんを助けてくれて本当にありがとう~! にーちゃんも無事でよかったぁあ!」

「大げさだなぁ。そんな泣き虫でどうすんだよ」



来年から小学生なんだろ?――と意地悪く笑う勇運くんに、夏海は「いいもん」とプイと顔を逸らした。



「僕は、にーちゃんみたいなコーコーセーになるんだ」

「いや、マジで十年早いっての」



呆れるものの、勇運くんは駆け寄ってくれた夏海の頭を撫でる。その様子を、あたたかい目で見る私……と、守人さん。


守人さんも子供が嫌いだと、勇運くんからメールで教えてもらった。



『俺は、兄貴のことを何も分かってなかったんだ』、と。メールで勇運くんは言っていた。



あの勇運くんが気づけないくらい、今まで、完璧に自分を隠してきた守人さん。

いつもニコニコしていたあの笑顔は、自分の気持ちを隠すための仮面だったのかと思うと、胸が痛んだ。
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