愛毒が溶けたら

すると、その時。



「勇運は……すごいね」

「え」

「きちんと過去を乗り越えてるんだ。兄として、尊敬するよ」

「守人さん……」



夏海と普通に話し、笑い合う勇運くんを見て。夏海と一定の距離を空けて、守人さんはポツリと零した。



「”子供が嫌い”、”父さんの死を乗り越えられない”というレッテルを、勇運にだけ貼らせて。僕は笑って誤魔化して、隠し続けていた。

虚勢を張っていたんだよ。恥ずかしい限りだ。勇運みたいに、堂々と自分の気持ちを曝け出せば良かったのにね」

「虚勢……」



とは、違う気がする。

だって当時、守人さんは高校生。

まだ、子供だもん。
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