お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「ホラ、行くぞ」
その時、ニッと笑った顔が――なぜか、お巡りさんの顔と重なって。
しばらくの間、目を逸らすことが出来なかった。
「どうしたんだよ、三石」
「えっと、あの……な、何でもない」
そういえば、私の名前を覚えてくれてるなぁ。
私はというと……もう十二月になるのに、未だクラスの人の名前を覚えることが出来ないでいた。
その理由の大半が、成希の事で悩んでいたから。
塞ぎこんでいたから、他の事にまで頭が回らなかったんだよね……。
だけど――このままじゃ、ダメだ。
「あの! 何て呼んだら、いいかな?」
「呼び方? なんで今さら」
「えっと……。な、なんとなく?」
へへと、下手くそな笑みを浮かべると、男子は黙って私を見た。
な、何やら考えている様子……。