お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

あの日、父さんの温かな手に撫でられながら、そう思った――





「――……ん、さん。守人さん!」

「え、あ」

「大丈夫ですか?」

「……うん」



冬音ちゃんの隣で、ベッドに座る勇運。

生意気な顔で「気絶してなくて良かったな」なんて。そんな憎まれ口を叩いている。


ねぇ、勇運。


お前がお前である理由、きちんとあるんだよ。知ってる? いつか、父さんから教えてもらったのかな。


……いや、きっと知らないだろうな。


父さんも、分かってるはずだ。勇運に「兄弟寄り添って」と話したところで、舌をべーっと出して、反抗的な態度をとるに決まってるから。



だけど、父さん。


勇運はね、きちんと僕に勇気を運んでくれたんだよ。


あの時、

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