お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

その瞬間、私は思わず目を瞑る。

男子が叩き損なった事も見据えて、逃げた方がいいのに……足が動かなかった。


ギュッ


怖くて、開けられない目。

すると――



「いいぞ」

「……え?」

「もう仕留めた」

「あ……、本当だ」



見ると、少しへしゃげて横になったハチの姿。

一発でハチを叩き殺したって事?
すごすぎる……。



「あ、ありがとう。ハチを叩けるなんて、すごいね」

「別に。獲物が大きかったから、逆に狙いやすかっただけだ」



教室にあったテイッシュを持って来、しゃがんでハチに被せる。

そしてもう一度、テイッシュの上からスリッパで踏んづけた。


ダンッ



「わ……、ビックリした」

「念のためだ。確実に殺しておかないと、危ないだろ」



そう言って、男子は今度こそ、ハチをテイッシュで覆ってゴミ箱に捨てる。覆う前に、針が出てないかも確認してた。


まるでプロのような手さばきに、思わず小さな拍手をしてしまう。
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